上海通信5 上海味めぐり(3)
白蘭花


 十二月に入り一週間程は15度以上の気温が続いていましたが、徐々に下がり始め、十日を過ぎる頃からは10度を下回るようになりました。窓から見えるお向いの、開発から取り残された一画に、上海でよく見掛けるレンガ色の瓦屋根に白いモルタルの3階建ての民家があります。その民家の2階に“小陽台”(小さなテラス)があり鉢植えが置かれています。老夫婦により育てられていますが、“小陽台”に掛けられた手作りのフラワーボックスに、ビニールが掛けられ小さな温室となりました。いよいよ本格的な冬を迎える準備です。そして鍋が美味しい季節です。十数年前、北京に一年半居た時、大好きだった“〓(さんずいに刷)羊肉”(羊の肉のしゃぶしゃぶ)が上海にもあります。北京の「東来順飯荘」(一九〇三年創業の“百年老店”〈老舗〉)のチェーン店です。


F東来順飯荘

 

 思南路にある郵便局の古い建物の2階です。本物の“〓(さんずいに刷)羊肉”の店です。しゃぶしゃぶ鍋には炭火を使用しています。鍋の具や野菜の種類は豊富で、お好みで選べます。“羊肉片”(薄くスライスされた羊の肉)、“羊肉丸子”(羊の肉団子)、“凍豆腐”(1度凍らせた豆腐)、“粉絲”(はるさめ)、白菜等を特製ダレで食べました。このタレが絶妙です。十数年前は、胡麻ペースト、胡麻油、醤油、香酢、トウバンジャン、紹興酒、ラー油、“甜麺醤”(甘味噌)、“腐乳”(豆腐を発酵させた物)、韮ペーストの塩漬け、魚醤等の調味料を自分で適当に混ぜて好みのタレを作っていましたが、この上海のお店は既に調合されたタレが、お碗で出てきます。1杯6元です。“涼拌心里美”(中国北方特産の外は白いけれども中は赤い丸大根を千切りにした上に砂糖と酢がかかっています)や“羊肉水餃”(羊の肉の水餃子)もあります。勿論、北京料理も上海料理もあります。

味<★★★> 雰囲気<★> サービス<★> 価格<安い>
住所:思南路9号 пF53064407



G全聚徳

   

 

 北京の味「東来順飯荘」を紹介したら、もう一つ北京を代表する味である「北京ダック」を紹介しないわけにはいきません。一八六四年(清朝同治3年)創業の、やはり“百年老店”である「全聚徳」です。淮海中路に面したビルの4階です。近くには百盛(パークソン)デパートや錦江飯店、花園飯店があります。入口で清朝の宮廷の女性の格好をした服務員が出迎えてくれます。店内も清朝風の内装で、かなり広いです。奥へ進むとエスカレーターがあり下の3階にも席があります。にもかかわらず、いつも満席で必ず待たされます。そして“〓(火へんに考)鴨”。べっ甲色に艶やかに光るダックが、ワゴンでテーブル傍まで運ばれて来ます。コックさんの見事な包丁さばきにより丸々のダックが、みるみるうちに骨だけにされてしまいます。2人で食べるには片身で充分です。薄く焼かれた“餅”でスライスされたダックと白髪ネギと甘味曾を包んで食べます。美味しいです。皮の表面のパリパリ感と裏側のジューシーさが堪りません。“鴨湯”(ダックのスープ)は、さっぱりとした味です。“溜鴨肝”(ダックのレバーと木耳、きゅうり、ネギの炒め物)も北京のしょっぱい味付けですが、やわらかくて美味しいです。ここも北京料理だけではなく上海料理もあります。

味<★★★> 雰囲気<★> サービス<★> 価格<安い>
住所:淮海中路786号 пF54037286

 

 

H小南国

   

 締め括りは上海料理に戻って、瑞金賓館の中にあるレストラン「小南国」です。瑞金二路にある瑞金賓館は、租界時代、競馬界の大物だった英国人モリスの邸宅でした。ヨーロッパ風の建物と庭園が点在しています。1階がバー、2階が西洋料理のレストランの棟、日本の天皇が“点心”(軽食、おやつ)を食されたレストランがある棟、1階にカフェが入っている棟、そして1階にインド料理とバー、2階にタイ料理のレストランがある棟、さらにホテルと「小南国」がある棟等です。「小南国」の入口を入って右側は庭も見えない小さな部屋ですが、左側は広々とした吹き抜けの空間があるメインダイニングとなっています。大きな窓が開放的な雰囲気でゆったりと寛げるレストランです。上海料理の店ですが広東料理もあります。ナント日本式お刺身まであります。 この日は殆どのテーブルが結婚披露宴のため貸切でしたが、隅に一つだけ空きがありました。初秋に入ってからは大きなレストランやホテル、有名店で、よく披露宴を見かけます。披露宴のため何度かレストランに入れない事もありました。今日はラッキーです。さて料理は前菜に“馬蘭頭豆腐干”(春菊のような味の刻んだヨメナと硬豆腐の和え物)と“金瓜絲海蟄皮”(シャリシャリとした糸状の金色の瓜〈?〉とくらげの和え物)。ヨメナも糸状の瓜も日本では見た事がない野菜です。とても美味しいです。メインは“清蒸桂魚”(魚の蒸し物)です。上に乗っている千切りのネギや香菜と一緒に食べると一段と美味しいです。そして“絲瓜面筋炒番茄”(へちまとトマト、揚げた麩の炒め物)はトマトが入っているので酸味でさっぱりとした味になっています。“青椒干絲炒肉絲”(ピーマンと豚肉、竹の子、硬豆腐の細切り炒め)も肉が控えめなので淡白で美味しいです。主食は“菜炒飯”(広東腸詰とネギ、チシャの茎入りチャーハン)。小さく切られた具が、程好い量で主張し過ぎず、とても美味しいです。

味<★★★> 雰囲気<★★★> サービス<★★★> 価格<ふつう>
住所:瑞金二路118号瑞金賓館2号楼 пF64662277

 ご紹介したいレストランは、まだまだ沢山ありますが、今回は、ここ迄にしておきましょう。ところで嬉しいオマケがありました。上海市が発行している領収書には、くじが付いています。友人達が、今だかつて当った人を見た事がないと言っていましたが、「小南国」で貰った領収書の1枚が当りました。5元です。\(~o~)/


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