上海通信5 上海味めぐり(1)
白蘭花


 十一月に入っても日中は半袖で過せる日もあった程、暖かでしたが、一週間が過ぎた頃、雨と共に急に冷え込みました。その寒さも一週間位でおさまり小春日和になりました。公園や街角に飾られている、菊の鉢で作られた大きな動物やアーチ等も、黄や橙、赤と満開になりカラフルです。“蟹肥菊黄”の言葉通り、もう上海蟹も十分に食べ頃でしょう。ここは「食」の中国、そして大都会の上海です。様々なレストランが、ひしめき競い合っています。本場の中国料理を堪能すべく、あちこち食べ歩いてみました。参考までに独断でレストランを評価してみました。味、雰囲気、サービス別に「とても良い」は<★★★>、「良い」は<★★>、「ふつう」は<★>です。価格については2人で食べて100元(1元≒14円で約1400円)以下を<安い>、100〜200元を<ふつう>、200元以上を<高い>と分けてみました。

復興公園
  


@圓苑 

 真っ先に紹介したいのは何といっても上海料理の「圓苑」です。高級マンションが立ち並ぶプラタナス並木道の美しい興国路にあります。わが家から歩いて十分程の所です。店内は壁にオールド上海の写真が、額に入れられ飾られている以外は、装飾のないシンプルなレストランです。1階には大小20卓程のテーブルが、さほど広くない店内に無駄なく配置されています。2階は宴会等の多人数向けのようです。夜十一時まで営業しているので、九時近くに入っても、ゆっくり食事ができます。何度か行きましたが、いつ行ってもほぼ満席です。店の前の路上には客の車が列なって停まっています。また、日本人御用達の店かしら・・・と思う程、いつも幾つものテーブルに日本人を見かけます。日本の女優、常盤貴子と共演した事がある香港スターの劉徳華(アンディー・ラウ)や最近、日本でも上映された映画「少林サッカー」の監督であり主演でもある周星馳(ジョウ・シンチー)、そして俳優、仲村トオルと共演した事がある台湾スターの鄭伊健(イーキン・チェン)もお忍びで来るそうです。

   


 看板料理は“圓苑紅焼肉”です。必ず勧められます。骨付き豚バラ肉の煮込みですが、油っぽくありません。砂糖醤油の味ですが甘過ぎず、しょっぱ過ぎず、いい按配の美味しさです。二人で食べるには量が多いので、殆ど“打包”(持ち帰り)して次の日に食べますが、冷めても白く固まりません。すっかり油分は抜いてあるのでしょう。“圓苑炒飯”も美味しいです。お醤油色なので味が濃いように見えますが、意外に、しつこくなく独特の旨味があります。“糯米紅棗”。小さな棗(なつめ)1個ずつに小さなお餅を挟んでシロップで煮ています。見た目も紅白で綺麗です。大好きな一品です。そして念願の陽澄湖の蟹を食べました。丸々1パイとなるとブランド蟹なので、やはり高いです。今シーズンはオスが1パイ128元で、メスは138元です。蟹1パイが、わが家のレストランでの1回の食事代に相当します。オス、メス両方の味を楽しもうとしましたが、時季的に美味しいオスを勧められました。上海蟹は小ぶりですが十分に肥っているので、濃厚な旨味をたっぷり堪能できました。まさに“口福”です。蟹味噌を使った“蟹粉〓(火へんに会)豆腐”も絶品です。初秋の頃にも食べましたが、やはり味が全く違います。その頃は、まだ蟹が痩せているので淡白な味でした。その外“〓(豆へんに支)油皇炒面”(トーチー味焼そば)も黄ニラが少し入っているだけですが美味しいです。“雪菜黄魚湯”(からし菜といしもちのスープ)も魚と漬物の臭みが無い、なんともいえない出汁の美味しさです。靖江で戴いたレンゲ草もありました。上海では“紅花菜”と言わずに“草頭”と言っています。

味<★★★> 雰囲気<★★★> サービス<★★> 価格<ふつう>
住所:興国路201号 пF64339123  

A海上明月

   


南京西路にある中信泰富広場の中に入っています。地下1階から6階までは高級ブランドショップが並んだテナントビルです。その3階にあります。同じ並びに「玄色衣裳」というブティックがあります。少数民族の苗族の刺繍を一部にあしらった中国風デザインの服の店です。一つひとつ手作りなので値段は高めです。麻やシルク素材のシックなデザインと色合いが好きで、対折(半額)や3折(7割引)の時を狙って買いました。さて、レストランに話を戻します。真っ白なテーブルクロスに黒い食器が置かれた店内は、お洒落な雰囲気です。ウェイターの服装も黒一色でスマートな印象です。四川料理の店ですが上海料理も広東料理もあります。三年前、上海では杭州料理が流行っていましたが、友人曰く、今は四川料理、湖南料理、貴州料理等の辛い料理が流行っているそうです。辛い料理は苦手ですが、ここの“麻婆豆腐”を食べてからというもの、時々白いご飯にのせて食べたくなります。ハァーハァーいいながら食べる味は格別です。“坦坦面”(四川辛味噌麺)も美味しいです。小さなお椀に1人分ですが、辛いので十分です。“干〓(火へんに扁)四季豆”(四川風インゲン豆の炒め物)もコリッとした歯応えで、つい手が伸びる一品です。お通しで出た辛い和え物も“萵笋”(チシャの茎)ではないかと思いますが、コリコリして、とても美味しい野菜でした。上海の味の“鶏絲涼面”(細く割いた蒸し鶏と細切りキュウリがのった胡麻だれの麺)や江南地方の味の“醤脆蘿葡”(大根の醤油漬、甘め)、そして“油淋子鶏”(鶏の唐揚げにとろみがついた酢醤油がかかっている)も美味しいです。

味<★★★> 雰囲気<★★★> サービス<★★★> 価格<高い>
住所:南京西路1168号中信泰富広場3階 :32181379


B芙蓉鎮

 お店の名前から映画「芙蓉鎮」を連想する方もいるのではないでしょうか。十数年前、今や中国を代表する役者であり監督でもある姜文と、かたや最近、巨額の脱税事件を起こした劉暁慶が共演した、文化大革命を題材にした映画です。感動的でした。さて、レストラン「芙蓉鎮」は番禺路の上海銀星皇冠暇日酒店(クラウンプラザホテル)の2階にあります。わが家から十五分程歩いた所です。ここも主に四川料理のレストランですが、やはり上海料理、広東料理もあります。ご存知のように中国料理は大皿料理なので、多人数で食べると色々な料理を味わえますが、少人数だと限られてしまいます。その点、この店は半分の量の小皿注文ができるので1人でも色々な料理が食べられます。この日は小皿を5品。“麻婆豆腐”、“川西茄子”(四川風ナスの炒め物)、“〓(くさかんむりに)枝酥牛柳”(レイシの果汁と香酢入りソースの牛肉のソテー)、“家常魚片”(一口大の白身魚と拍子木切りのザーサイの炒め物、山椒が効いている)、“菠羅〓(口へんに古)〓(口へんに魯)肉”(酢豚)。そして普通皿の“蜀香粉蒸鶏”(プリプリしたモヤシの上に四川独特のスパイスの効いた、やわらかい鶏の唐揚げがのっています)。さらに小さなお椀の“紅湯坦坦面”(赤いたれのタンタン麺、甘め)と“紅焼牛肉面”(しっかり味がついた牛肉の細切りがのった麺、辛めのたれ)と色々食べられました。また、ホテル内にもかかわらずサービス料は取られません。しかし飲物が高いです。

味<★★> 雰囲気<★★> サービス<★★> 価格<ふつう>
住所:番禺路400号上海銀星皇冠暇日酒店(クラウンプラザホテル)2階 пF62808888


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