上海通信NO.8 春の雲南大旅行(1)

      
                                               白蘭花

 3月2日からベトナム、ラオス、ミャンマーと国境を接する中国本土南端の雲南省へ行って来ました。昆明、大理、麗江、シーサンパンナと7泊8日の旅です。上海から昆明へは飛行機で飛びました。列車で行くと丸3日かかってしまいますが、飛行機だと3時間20分で着きます。静安寺にある中国旅行社で、ネット上で見た最低価格の1300元の航空券を購入できました。山東省済南市の友人、T大姐(お姉さん)という心強いパートナーも一緒です。昆明空港で落ち合いました。

(^_-)丿春の城−昆明

 朝、寒の戻りで冷え込む上海を後にし機上の人となりました。航空券が通常価格の75%で購入できたので、乗客が少ないのかと思っていたら、意外にもほぼ満席でした。前の座席には少数民族のご夫婦が座っています。初めての空の旅でしょうか・・・客室乗務員に托送荷物の行方を心配して尋ねていました。3時間座りっ放しで、座席の窮屈さを感じ始めた時、昆明に到着しました。最高気温10度の上海から、一気に20度を越える昆明(雲南省の省都、人口約370万人、26の少数民族が居住)へ入りました。雲南省のほぼ中心に位置する昆明は海抜1800mの高原である上、北からの寒気は省境の高い山脈に阻まれたり、四川盆地に吸収されたりして、昆明迄は届きません。また南からの熱風はインドからの季節風に阻まれ入って来ません。なので昆明は一年中、春のような気候だそうです。さて、T大姐は経由する重慶が霧の為、1時間遅れの到着でした。昆明ではT大姐の知り合いが出迎えてくれました。

 ホテルにチェックインすると、直ぐ名物"米線"(素麺のような物)や"蚕豆〓(火へんに閃)飯"(そら豆炊き込み御飯)、地元の高原野菜を使った料理等のお昼ご飯をご馳走になり、世界園芸博覧園へ向いました。少数民族イ族の阿詩瑪(イ族の「お嬢さん」の呼称)がガイドに付いてくれました。広々とした園内は、全面積218haあります。全国の省、自治区、市により特色を生かした庭園や工芸品が展示されています。T大姐の山東省の庭園は金賞に輝いただけあって立派なものです。上海市のガーデンや日本の庭、イングリッシュガーデンもありました。夕刻、乗り物酔いで疲れた身体に、ようやく春を感じ始めたばかりで、暖かな日差しが恋しい上海から、いきなり昆明の強い日差しを背に受け続けたせいでしょうか、この日は此処で、もうダウン。                                                           
  
(^_-)丿「阿詩瑪(アシマ)〜!」−石林 

 昨夜、充分休息したお蔭で元気に起床。今日は楽しみにしていた石林(総面積約400ku、独特のカルスト地形)へ行きます。昆明から高速を走り1時間半です。どことなくのんびりとした雰囲気の昆明の街を通り抜け、そら豆等の野菜畑や赤土が広がる景色の中を走りました。
 
 石林でも民族衣装を着た阿詩瑪がガイドです。阿詩瑪はもともとイ族の伝説の人物です。昔、イ族には阿詩瑪という美しい勇敢な娘がいました。阿詩瑪には阿黒哥という恋人が居ましたが、地主の息子が横恋慕し阿詩瑪を連れ去ります。阿黒哥が阿詩瑪を救出しますが、諦め切れない地主の息子が堰を塞いでいた石を取り除いた為、二人は洪水に流されてしまいます。阿黒哥は助かりましたが阿詩瑪は見付かりません。阿黒哥が「阿詩瑪〜!」と叫ぶと阿詩瑪の代わりとして石林が現われたそうです。

 ガイドの阿詩瑪が、手を胸に当て篭を背負った阿詩瑪だという石を教えてくれました。鋭く侵食された石灰岩も、そう言われれば、その様に見えてくるから不思議です。また、阿詩瑪達が被っている帽子には左右に小さな角がありますが、阿詩瑪と阿黒哥を象徴しているのだそうです。帽子を上から見ると、二つの角を結ぶ布が斜めに張ってあります。天の川だそうです。阿詩瑪達は朝起きてから夜寝るまで帽子を被っているそうですが、男性が帽子に手を触れたら求愛の印だそうです。見学後、お茶を戴きました。チョロギのような形をしたプーアル茶です。苦味の後に少し甘さが残ります。金木犀の香りの紅茶は、お茶の樹の間に金木犀を植えて香りをつけるそうです。さて、午後は昆明から飛行機で大理へ行きます。阿詩瑪と阿黒哥に別れを告げ、急ぎ昆明へ戻ります。途中、昼食をご馳走になりましたが、"〓(女へんに乃)酪"という牛と山羊の乳で作ったチーズを焼いた物がありました。初めて食べましたが、あっさりとして美味しい物でした。

(^_-)丿女の国、風の郷−大理

 昆明から飛行機で40分でした。小さな空港に降り立ったら、いきなり強い風に見舞われました。大理は一年中風が吹いているそうです。出迎えてくれた地元旅行社の金花(ぺー族の「お嬢さん」の呼称)が教えてくれました。運転手は阿鵬(ぺー族の「若い男性」の呼称)かと思ったら違いました。漢族でした。なんとペー族の男性は働かないそうです。ぺー族では仕事をするのも子育てをするのも女性だそうです。さて、空港から15km程走ったら大理の街が見えてきました。〓(さんずいに耳)海(じかい)《以下は「じかい」と記載》南端の町、下関(大理市新市街)です。蒼い水を湛えた湖、「じかい」(約247ku)や、背後には4000m級の19もの峰が連綿と続く蒼山の美しい風景も見えます。

 大理白(ぺー)族自治州(総面積1458ku、人口約320万人の内、ぺー族約130万人、漢族約100万人、他の少数民族約90万人)の大理市(人口約45万人の内65%がぺー族)は海抜1972mに位置します。唐代には大理国(南詔国)の首都でした。下関の北にある大理古城は唐、宋代の500数年間、雲南省の政治、経済、文化の中心でした。背後には蒼山、前には「じかい」に挟まれた古城近くの三塔寺公園へ。約69mの大塔は唐代に建てられた物で、背後にある南北の二つの塔(43m)は宋代に建てられた物です。地震により南北の塔は傾きましたが、より古い大塔は何ともなかったそうです。

大理といえば大理石。様々な大理石の工芸品があります。蒼山を描いたような模様の大理石の額がありました。店の言い値は680元です。石に詳しいT大姐の「200元」との鶴の一声が効き、200元で購入できました。重いので上海まで郵送して貰う事にしました。郵送料は98元です。二週間後にちゃんと上海の我が家に届きました。包装した後に発泡剤を注入して隙間を埋めた完璧な梱包でした。この梱包だったら確かにガタガタ道も平気でしょう。さて、夕食は古城内の"楊家花園"へ。中庭のブーゲンビリアの木の下で戴きました。春風が吹き抜けていきます。のんびりとした穏やかな空間でした。ガイドの金花と運転手の籐のテーブルに並べられた料理は、私達の皿と違ってどれも赤い唐辛子色です。この地方は辛い料理を好むそうです。


 夕食後、ぶらぶらと古城を歩きました。城内面積は4kuです。北城楼、南城楼、蒼山楼、五華楼の門があります。黒瓦に板やレンガ、漆喰塀等に綺麗に整備された商店街が続きます。水路が流れる通りもあり、ベンジャミンも植えられています。やはり年平均気温15度前後の大理です。ある商店街の店先の小さな台で、帽子等の小物を売っていたぺー族のおばさんが、すぐ近くの自宅には色々な物があると言うので見に行きました。
 
 商店街を一歩中に入ったら、井戸がある小さな中庭を取り囲んで口型に家が建っていました。井戸の傍で小学生になったかならないかの年端の女の子が食器を洗っていました。外階段を上がった2階の1部屋に、絞り染めの布や刺繍された布が山積みされていました。すべて手仕事の品です。やはり作るのも売るのも女性です。 
 

 翌日、下関のホテルをチェックアウトし、「じかい」の遊覧船に乗りました。昨日は雪を頂いている蒼山がはっきり見えていましたが、今日は日差しが眩しい程の好天にもかかわらず見えません。遊覧船ではペー族の踊りや客人をもてなす儀式である"三道茶"を戴きました。1杯目は苦みの後に甘味が来ます。咽喉の渇きや疲労をとります。2杯目は蜂蜜や胡桃等が入っているので甘いお茶です。元気になり気分を爽快にします。3杯目は胡椒や生姜、山椒等が入っているので、爽やかさが口に広がりいつまでも味が消えません。ゆっくりとした速度の遊覧船が、漸く「じかい」東北にある南詔風情島に一時停泊しました。此処は南詔国国王の別荘があった島です。小高い丘を登ると、広場にミモザアカシアの黄色い花が鮮やかに咲いていました。

  「じかい」北端の上関近くの桃源港で遊覧船を降り、村長経営のレストランで昼食です。豚肉の刺身を勧められましたが遠慮しました。朝潰した豚を新鮮なうちに食べるそうです。夕食まではもたないそうです。昼食後、映画「五朶金花」で有名な胡蝶泉へ。その昔、封建的な因習に逆らい愛情を貫く為、泉に身を投げたぺー族の若い男女が胡蝶と化したとの言伝えが胡蝶泉の由来です。映画「五朶金花」は、ぺー族の若い男性、阿鵬が乗馬レースに参加する為、急ぎ向っている途中、ぺー族の女性、金花達が荷車が壊れて困っているところに出くわします。修理してあげた為レースに遅れますが、見事優勝し金花の祝福を受け、二人は結婚の約束をします。再会を約束し二人は別れますが、次に会える迄に、同じ金花の名前の女性が外に4人いる為、阿鵬の勘違いによるドラマが4度あります。最後は胡蝶泉で再会しハッピーエンドです。この映画によりぺー族の女性は金花、男性は阿鵬と呼ばれるようになったそうです。

 大理の「風花雪月」、つまり「下関風」(地理的、地形的にインド洋からの風が一年中吹いています)、「上関花」(元代に途絶えたそうですが蓮の花のように大きく白く、金木犀より香りが強い花があったそうです。今は木蓮の花を指すようです)、「蒼山雪」(蒼山の万年雪)、「じかい月」(高原の輝く真珠と云われる「じかい」に映る月は更に美しいそうです)とも、ガイドの金花とも、もうお別れです。


上海通信No.8-(2)へ
★ 上海通信トップへ
    トップページへ